九一式航空魚雷で最も問題となるのが改三以降の発展型である。資料によっては改七型まで改良されたといわれているものも多いのだが、実状はもっと複雑であった。なぜなら、これ以降の九一式航空魚雷は、推進機関を持つ魚雷本体の改良を表すために改番号が付けられていくためである。そして、炸薬を搭載した魚雷頭部と別々に改良が加えられていくこととなる。
ところが、前線では弾頭の型によって魚雷の型を区別していたため(当然な話だ)、魚雷頭部の型がそのまま「〜型」として通用した。
こうしたしだいで、たとえば「改四型(強)」と呼ばれるものは正確には「改三型(強)の胴体に、改四型頭部を装備したもの」の事を指し、「改七型」は「(おそらくは)改三型(強)の胴体に、改七型頭部を装備したもの」をいうため、手記などでは相当混乱したものとなっている。
直径 (p) |
全長 (m) |
重量 (kg) |
炸薬量 (kg) |
雷速 (kts) |
射程 (m) |
原動力 | 最大射入速度 (kt) |
最大射入高度 (m) |
注釈 |
45
|
5.47
|
840?
852? |
235?
240? |
42
|
2000
|
空気+ガソリン
|
245
(計画値) |
200
(計画値) |
炸薬量は同一資料内にても混乱。これは改三頭部装備型 |
太平洋戦争における日本海軍のスタンダードといってよい航空魚雷。以降の航空魚雷における雛形となった。基本的に改二型の各部を強化したものと考えて良い。
なお、一般に装着されたものは改三頭部である。これは、重心点を低くするため九一式航空魚雷改二型で弾頭内上部に空所を作っていた所に炸薬を充填したもので、威力が強化されたものである。
このように炸薬量を増すことが出来たのは、改二型から装備された安定舵の影響が大きい(安定舵とは、魚雷のローリングを防ぎ、直進性を増やすために製作された「翼」のようなもの)。これによって直進性を維持するために魚雷の重心点を中心線上から低くする必要が無くなったためである。
直径 (p) |
全長 (m) |
重量 (kg) |
炸薬量 (kg) |
雷速 (kts) |
射程 (m) |
最大投下速度 (kts) |
負浮力
(s) |
馬力 (41-43kts時) (HP) |
45
|
5.275
|
849
|
240
九七式 |
41-43
|
2000
|
260
|
172
|
140
|
注釈 | ||||||||
"NAVAL WEAPONS OF WORLD WAR TWO"からのデータ。 |
*安定舵について*
それまでの航空魚雷は投下された後空中を側転しながら落ちていたため、投下する高度によって上面の向く方角が違っていた。そのため、水中に突入したあとの魚雷が安定するよう、重心点を魚雷の中心軸よりも低くして安定させていた。こうしておけば、潜水艦と同様、水中での安定性が増し常に同じ上面が上を向くようになる。
このためそれまでの魚雷上部には空所が作られていた。
しかし、安定舵の装着によって常に同じ面が同じ方向を向いたまま落下するようになり、水中に魚雷が突入した後で上面が海面を向くよう修正する必要が無くなったため、重心を中心軸と同じ位置にしてもほとんど問題が無くなった。これにより、空所にまで炸薬を搭載することが出来るようになったのである。
*管理人考察*
なお、安定舵は改二型から装備されているにも関わらず、ようやく改三型で弾頭に炸薬の増量が行われている。これは単に開戦時のごたごたで、設計(改良)及び製造に時間がなかったためではないか?
直径 (p) |
全長 (m) |
重量 (kg) |
炸薬量 (kg) |
雷速 (kts) |
射程 (m) |
原動力 | 最大射入速度 (kt) |
最大射入高度 (m) |
注釈 |
45
|
5.47
|
858
|
240
|
42
|
2000
|
空気+ガソリン
|
300
|
?
|
天山艦攻で使用可能なように改三型の強度を強化したもの。これは改三頭部装備型 |
九一式航空魚雷改三型は優秀な魚雷であったが、高速艦攻である天山の出現により魚雷の強度不足という問題が再び発生したため、この新型艦攻で運用できるよう改三型を改良・強化したもの。
しかし、実際にはまだ強度不足であり、すぐに下の改三(強)型へと改良されている。
直径 (p) |
全長 (m) |
重量 (kg) |
炸薬量 (kg) |
雷速 (kts) |
射程 (m) |
最大投下速度 (kt) |
45
|
5.275
|
857
|
240
九七式 |
41-43
|
2000
|
300
|
負浮力
(s) |
空気量
(l) |
空気圧
(s/cm^2) |
空気量 (摂氏15度) (kg) |
ガソリン (kg) |
純水量 (kg) |
馬力 (41-43kts時) (HP) |
180
|
182.6
|
180
|
38
|
4.04
|
17
|
140
|
注釈 | ||||||
"NAVAL WEAPONS OF WORLD WAR TWO"からのデータ。おそらく改三頭部装備型 |
直径 (p) |
全長 (m) |
重量 (kg) |
炸薬量 (kg) |
雷速 (kts) |
射程 (m) |
原動力 | 最大射入速度 (kt) |
最大射入高度 (m) |
注釈 |
45
|
5.47
|
858
|
240
|
42
|
1500
|
空気+ガソリン
|
350
|
?
|
改三型(改)の強度を強化したもの。これは改三頭部装備型 |
大戦後期まで使用された航空魚雷。魚雷強化のために重量が増えすぎたため気室を小型化してバランスをとっている。そのため、最大射程がそれまでの魚雷より500m減少した。
この魚雷の登場により新型艦攻でも速度制限無く運用が可能となっている。
なお、魚雷頭部にゴム製の被帽(カバー)をかぶせることで魚雷の海面突入時における衝撃を吸収するようになったのはこれ以降である。
直径 (p) |
全長 (m) |
重量 (kg) |
炸薬量 (kg) |
雷速 (kts) |
射程 (m) |
最大投下速度 (kt) |
45
|
5.275
|
857
|
240
九七式 |
41-43
|
1500
|
350
|
負浮力
(s) |
空気量
(l) |
空気圧
(s/cm^2) |
空気量 (摂氏15度) (kg) |
ガソリン (kg) |
純水量 (kg) |
馬力 (41-43kts時) (HP) |
180
|
183.2
|
160
|
33
|
4.04
|
17
|
140
|
注釈 | ||||||
"NAVAL WEAPONS OF WORLD WAR TWO"からのデータ。おそらく被帽型改三頭部装備型 |
九一式航空魚雷改三頭部装備型
基本といってよい魚雷頭部。艦攻で使用するために開発された。 九一式航空魚雷改四頭部装備型
艦攻機用の魚雷頭部。一撃必殺の破壊力を求めて製造された。ただし、これが実戦で使用されたのは相当後なのではないかと思われる。
九一式航空魚雷改六頭部装備型
現在の所不明。大型攻撃機用の頭部? 九一式航空魚雷改七頭部装備型
陸上攻撃機で使用するために計画された大威力の航空魚雷頭部。銀河、飛龍などで使用された。
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直径 (p) |
全長 (m) |
重量 (kg) |
炸薬量 (kg) |
雷速 (kts) |
射程 (m) |
原動力 | 最大射入速度 (kt) |
最大射入高度 (m) |
注釈 |
45
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?
|
?
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?
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?
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?
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空気+ガソリン
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?
|
?
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航空魚雷の所轄が航空本部に移転したため開発中止。量産に適さないとの伝あり |
艦政本部が扱った最後の航空魚雷。昭和17年に来年からの航空魚雷所管が航空本部へと移転する事が決定されたため開発が中止された。
反対理由は、(仮称)改四型がインチ法で設計されており、メートル法を主体とする航空本部系列の工場では量産に適さないというものであった。
こうして、航空本部は航空魚雷の移管と同時に改五型魚雷の設計を開始するのである。
*管理人考察*
「改四型」の名称から「改四型(九一式航空魚雷改三型(改四頭部))」と混乱されることが多いが、同じものではない(ほとんどの場合、「改四型」といえば九一式航空魚雷改三型(改四頭部)のことである)。
直径 (p) |
全長 (m) |
重量 (kg) |
炸薬量 (kg) |
雷速 (kts) |
射程 (m) |
原動力 | 最大射入速度 (kt) |
最大射入高度 (m) |
注釈 |
45
|
5.27
|
?
|
235?
240? |
42
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1500
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空気+ガソリン
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350?
400? |
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射入速度は恐らく400kt 改三頭部装備型 |
大戦後期に開発された航空魚雷。航空本部が開発した初めての航空魚雷でもある。
基本的に改三(強)の改良型であり、重量は不明だが、恐らく改三(強)と同程度であると思われる。
連山陸攻で使用することも可能な強度を持っていたが、ほとんど量産に移らないまま四式一号空雷へと生産が移行した。
九一式航空魚雷改三頭部装備型
基本といってよい魚雷頭部。ただ、改五型の段階で装備されていたかは不明。 九一式航空魚雷改四頭部装備型
艦攻機用の魚雷頭部。一撃必殺の破壊力を求めて製造された。ただし、改五型は数が少なく、どの程度実戦で使用されたか不明。 九一式航空魚雷改七頭部装備型
陸上攻撃機で使用するために計画された大威力の航空魚雷頭部。 |
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