九一式航空魚雷変遷 〜初期型から改二型まで〜
〜帝国海軍唯一の実用航空魚雷〜

 航空魚雷について調べていたところ、資料によりまちまちな部分が多く制作者が混乱したため、自分で納得するため作成しました(^^;。
 かなり想像に頼っている部分もあり、実際と異なる部分もあると思いますが、どうかご了承下さい。

九一式航空魚雷

直径
(p)
全長
(m)
重量
(s)
炸薬量
(s)
雷速
(kt)
射程
(m)
原動力 最大射入速度
(kts)
最大射入高度
(m)
45
5.27
785
150
44
42
36
1500
2000
3000
空気+ガソリン
120(実用値/予想)
80(実用値/予想)

 昭和3年(1928年)から試製魚雷戊の名前で開発が開始された日本独自の航空魚雷。以後の日本海軍雷撃隊で使用された唯一の航空魚雷でもある(後に採用された実用航空魚雷は全てこの九一式の改良である)。なお、炸薬量は149kgとの説もあるが、この差は単に生産における許容誤差という可能性もある。試作魚雷が完成したのは昭和6年(1931年)の事。
 性能は非常に優秀であったため、実戦部隊からの反応は高かった。
 当たった資料では特に記されてはいなかったが、運用制限では下の改一と同等程度であったと考えられる。
 一三式艦攻、八九式艦攻、九二式艦攻などで使用された。

九一式航空魚雷改一

直径
(p)
全長
(m)
重量
(s)
炸薬量
(s)
雷速
(kt)
射程
(m)
原動力 最大射入速度
(kts)
最大射入高度
(m)
備考
45
5.47
785
170
42
2000
空気+ガソリン
120(実用値)
80(実用値)
マレー沖で使用

 昭和9年から生産が開始されたもので、九一式航空魚雷(初期型)の気室を改良し、それによって浮いた重量を炸薬量の増大に振り向けたもの。そのため全長は20cm長くなった(炸薬量は149.5kgという資料もあるが、これはおそらく九一式航空魚雷初期型と混乱したものと思われる)。
 この時、べつだん構造は強化されなかったこともあり、発展著しい新型機で運用するには問題があった(機体の最大速度が速すぎて魚雷の投下速度が大きくなり、海面に衝突したときに魚雷が破損してしまう)。
 このため、雷撃時に厳しい制限がかけられる事となり、実戦部隊からの受けは悪かった(それまでに使用されていた九二艦攻の最大速度は130knであり、雷装状態では速力が低下しているため全力飛行時に魚雷を投下しても別段問題は起こらなかったのだが、当時の新鋭機である九六艦攻では60kn、九六陸攻に至っては104knも低速で運用せざるを得なかった)。
 これは重大な欠点であったが、当時次世代航空魚雷として計画された九四式二型魚雷の設計が進められていたため改良はされなかった(日中戦争の勃発によって魚雷どころでなくなったという事情もあった)。
 日米開戦時、いまだ数の揃わない改二型の補完としてマレー沖で使用され、世界初の洋上航行戦艦を撃沈するという武勲を立てている。

直径
(p)
全長
(m)
重量
(kg)
炸薬量
(kg)
雷速
(kts)
射程
(m)
最大投下速度
(kts)
負浮力
(s)
馬力
(41-43kts時)
(HP)
45
5.275
784
150
九七式
41-43
2000
260
103
140
注釈
"NAVAL WEAPONS OF WORLD WAR TWO"からのデータ。

*管理人の独自見解*
 炸薬量が150と170の間で混乱してると陳べたが、管理側は初期型と改一型の両者を一緒に考えていた可能性もあり、そうだとしたらこの混乱にも納得がいく。仮に区別されていなかったとしたらマレー沖で使用された航空魚雷に初期型が混ざっていた可能性もある。

九一式航空魚雷改二

直径
(p)
全長
(m)
重量
(s)
炸薬量
(s)
雷速
(kt)
射程
(m)
原動力 最大射入速度
(kts)
最大射入高度
(m)
備考
45
5.47
838
204
42
2000
空気+ガソリン
224(計画値)
200(計画値)
真珠湾、マレー沖で使用

 軍縮条約開け直後の昭和13年、九四式航空魚雷二型の失敗により急遽改良されることになった九一式航空魚雷(の改良型)。安定機と安定舵を装備することで空中時と水中時の安定性を大きく増し、同時に投下直後から浅深度を進むようにしたものである。これによって魚雷の直進性は大きく向上している。
 しかし、この改造に当たっては軍令部と艦政本部の反対したため設計が進まず、真珠湾攻撃の計画を山本五十六聨合艦隊司令長官がごり押しで進めた結果、かろうじて日米開戦直前に実戦部隊が手にすることが出来たのはよく知られるところである。
 改二型は太平洋戦争序盤において多くの戦果を挙げており、特に真珠湾での戦果はこの浅海面馳走能力無くしては無理だった。とはいえ、改二型はあくまで暫定的なものであり、すぐに改三型に生産が移行している。
 計画時は九六陸攻での使用を念頭に置いていたこともあり(上の表における最大射入速度と高度は計画時の値。実値は不明だが問題が出たという話は聞かないので、計画値以下ということはないと思われる)、一式陸攻以降の新型機では使用条件に制限がかけられている。
 なお、炸薬量が205kgとか、重量が840kgとか資料によってばらつきがあったが、この差は単に生産における許容誤差という可能性もある。

直径
(p)
全長
(m)
重量
(kg)
炸薬量
(kg)
雷速
(kts)
射程
(m)
最大投下速度
(kts)
負浮力
(s)
馬力
(41-43kts時)
(HP)
45
5.486
935
205
九七式
41-43
2000
260
123
140
注釈
"NAVAL WEAPONS OF WORLD WAR TWO"からのデータ。
 
[九一式航空魚雷変遷 〜改三型から改五型まで〜]

参考文献:「海軍水雷史」
「航空技術の全貌」原書房

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