日本海軍 艦隊型駆逐艦〈小春〉級/可型 |
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図は〈小春〉T型二番艦〈初音〉 |
対独戦を睨んで建造された艦隊型万能駆逐艦──〈薫風〉級駆逐艦は、高い性能を得るため基準排水量が3250トンに達する大型駆逐艦となってしまった。しかし、このような艦を建造するためには多くの費用と時間が必要であり、補助艦にとって最も重要な要素である「数をそろえる」ことは困難なものとならざるをえなかった。
そのため日本海軍は艦隊型駆逐艦の整備を、有力な性能を持つハイ・コストな〈薫風〉級駆逐艦と、小型で量産が利くロー・コストの駆逐艦との二本立てで整備することを計画した。このロー・コスト駆逐艦が、〈可〉型駆逐艦として知られる〈小春〉級である。
同級の設計に当たっては、コストダウンと大量生産のために徹底的な簡素化と合理化を図るために直線と円で構成された船体を採用している。また、機関は〈初春〉級のものを流用、備砲その他の艤装品の七割近くも〈松〉級駆逐艦と共通とした。ほかに、建造工法として電気溶接とブロック工法を取り入れることで大幅に建造スピードを上昇させる事にも成功している。さらに、材料として入手の容易な高張力鋼を使用する事で生じる重量増加も目をつぶる事となった。こうした努力によって〈小春〉級の建造に必要な期間は平均で八ヶ月という速度を記録している。
生産性を重視して設計された〈小春〉級は、昭和二三年一二月に突如として始まった日米戦のため、大型艦の建造、修理で余裕が存在しなかった官営工場に変わって全国の民間造船所で大増産が行われる事となった。このとき、砲などの艤装品の都合が付かない艦が出たため、新旧様々な武装を間に合わせで装備する事になった(そのため、一部では搭載兵装が爆雷のみという艦まで出現している)。
当初の予定では二線級部隊として後方支援に従事するはずの〈小春〉級であったが、戦争の影響によって竣工する片端から最前線に投入され、ほとんどの戦闘に姉妹艦のいずれか参加している。
なお、戦後になって同級は「それほど優秀ではなかった」という風説が一般化することになったが、〈小春〉級に求められていた役割は大型駆逐艦の補完であり、そういった点からはむしろ十分な結果を残したといえよう。
戦後は軍備縮小の余波を受けてほとんどが解体、あるいは予備艦とされ、状態の良いごく少数のみが現役に残った。残りは友邦国に売却(貸与)されている。
□要目(〈小春〉T型 計画値)
■基準排水量 1960t ■全長 119.4m ■全幅 10.5m
■最大速力 32.4kt ■機関出力 42000hp ■航続力 4000M/18kt
■主要兵装 45口径四式12.7p連装高角砲3基
70口径五式40o機銃15門(三連装5基)
零式61p五連装魚雷発射管1基
四式散布爆雷乙2基
□要目(〈小春〉V型 計画値)
■基準排水量 2125t ■全長 121.2m ■全幅 10.5m
■最大速力 32.2kt ■機関出力 42000hp ■航続力 4000M/18kt
■主要兵装 45口径四式12.7p連装高角砲3基
70口径五式40o機銃20門(四連装5基)
零式61p五連装魚雷発射管1基
四式散布爆雷甲2基
□同型艦 一四四隻(改良型、準同型艦も含む)
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