IJN, Battle Cruiser, <AZUMA>class
日本海軍 巡洋戦艦〈吾妻〉型

■ Profile
 日英米の三国は一九二一年のワシントン軍縮会議によって戦艦の建造を一九三六年が明けるまでの間禁止した。そして、それ以降は艦齢二五年以上の旧式艦に限り基準排水量が三万五千トン、主砲口径は一六インチまでの戦艦を代艦として建造することを取り決めた。
 この条約に従い、一九三七年になると合衆国と英国は老齢戦艦の代艦として〈ワシントン〉級と〈キングジョージX世〉級戦艦の建造を開始した。こうした流れを受けて日本も第三次海軍軍備補充計画(通称「B計画」)のなかで老朽化した〈金剛〉級の代艦として四隻の主力艦を建造することにした。これが〈吾妻〉級である。
 〈吾妻〉級は当初、軍縮条約で認められていた制限を一杯に使った正一六インチ──四〇・六p五〇口径砲を九乃至一〇門備えた中速戦艦として計画されていた。しかし、一九三六年に日英米間で開かれたワシントン条約の補完会議である第二次ロンドン軍縮会議において「代艦の主砲口径は最大一四インチ──三五・六pとする」という合意をみたため、主砲口径を一四インチとして再設計することとなった。
 これにより〈吾妻〉級は〈扶桑〉級や〈伊勢〉級といった戦艦と口径が同じとなり、補給面でよい結果を生みだすこととなった(〈長門〉級の主砲口径は正四一pであり、〈吾妻〉級が四〇・六p砲を採用したなら、主砲弾の補給に問題が出ることは明らかだった)。
 しかも、有事のために〈吾妻〉級は四一p連装砲三基に換装が可能なように主砲のターレットリングに助長性を持たして設計してあった。これは、第二次ロンドン条約で「軍縮条約に参加していない国が一六インチ以上の砲を搭載した戦艦を建造した場合、条約参加国は排水量四万五千トンまでで一六インチ砲を搭載した戦艦を建造しても良い」というエスカレーター条項が決められたことによる。
 だが、主砲を四〇センチ砲に換装しても〈吾妻〉の装甲はあくまでも対三六センチ砲防御であるため四〇p砲の攻撃に耐えられるよう強化する必要があった。そのため排水量は一万トンほど増大し、最大速力が二八ノット程度まで低下することになってしまう。結局、高速艦の需要が大きかった第三次世界大戦でも最後まで主砲が換装されることはなかった。
 同級の特徴として、防御力の強化という観点から日本が設計した戦艦として初めて機関の相互配置を行った事が挙げられる。もっとも、爆弾一発で行動能力を失う小型艦ならいざ知らず、戦艦クラスの大型艦に缶機缶機のシフト配置を行う価値があるかは疑問であり、採用しただけの価値があるか論議されることが多かった。現在では、総合的な防御力においては予備浮力が他国の同クラス戦艦と比べて少ないことから、あまり高いものでは無いという評価が一般となっている。しかし、ポスト・ジュトランド型戦艦である同級はそれまでの旧式戦艦と比べて強力なのも確かで、大型艦の中では比較的小回りの利く事もあり、様々な戦場に投入され各地を転戦することになった。
 そのため〈吾妻〉級は損害を受ける機会が多く、二番艦〈常磐〉は第三次大戦中期にカリブ海で戦没、〈吾妻〉は世界大戦の休戦を英国沿岸部において大破着底した状態で迎えている。その後、〈吾妻〉は修理されることなくそのまま英国で解体された。

■ Data
(太平洋戦争開戦時・図は新造時のもの)
基準排水量: 36000t 満載排水量: 42600t
全長: 242.0m 全幅: 32.0m 喫水: 9.3m
機関: 艦本式オール・ギヤード・タービン8基4軸
出力: 150000hp(計画時)
最大速力: 32.2kt 航続力: 7870M/16kt
主要兵装: 50口径九六式35.6p三連装砲3基
65口径九八式10p連装高角砲10基
65口径五式40o機銃32門(四連装8基)
70口径六式20o機銃36門(四連装4基、連装4基、単装12基)
五式12p三〇連装対空噴進砲4基
同型艦: 〈吾妻〉〈常磐〉/〈一一〇号艦〉〈一一一号艦〉(計画のみ)

一つ上の階層へ indexページへ 総合indexページへ 一つ前へ