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日本陸軍 五式中戦車 "チリⅡ" |
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図は八八ミリ戦車砲採用型 |
戦車とは、歩兵を支援するべく作られた移動可能なトーチカであり、敵陣を打ち砕く破城鎚である──。
創生期における日本の戦車は以上のような「歩兵支援」というドクトリンの上に成り立っていた。
こうした戦術指向に対応すべく開発されたのが〈試製一号戦車〉から〈九七式中戦車〉に至る中戦車群である。
しかし、このような概念の元に編制された機甲戦力では集中運用を前提に訓練されたドイツ機甲部隊の敵ではなく、対独戦(第二次世界大戦)では〈九七式中戦車改〉や〈一式中戦車〉といった「性能面ではドイツ戦車に匹敵する新型戦車」を投入しながら、運用面での稚拙さにより完全な敗北を喫する事になる。
そのため帝国陸軍は、「戦車の主任務は対戦車戦闘」という新たなドクトリンの研究と、それに対応する新型戦車の開発を開始した。大戦の自然休戦によって一息つくことが出来た陸軍は独軍戦車に対抗すべく長砲身一〇五ミリ砲を搭載した次期主力戦車──後の〈九式機動戦車〉(TK-1/チル車)──の開発を急ぐ一方、当座を凌ぐための暫定措置として開発中の戦車の中で十分な対戦車性能を持つものを捜索した。
このとき候補に挙がったのが〈九七式中戦車〉の後継車両として開発が進められていた〈チト車〉と〈チリ車〉であった。そこで陸軍は早期に新型戦車を生産するため二本立てで開発されていた〈九七式中戦車〉の後継車開発を〈チリ車〉寄りとして一本化し、かつ攻撃力と防御力を強化した新戦車として開発する事とした。これが〈チリⅡ〉──後の〈五式中戦車〉である。対抗目標として考えられた戦車は、当時ドイツで開発が最終段階へと入っていたⅤ号戦車〈パンテル〉であった。
幸い〈チリⅡ〉の開発は順調に進み、昭和二〇年八月にはプロトタイプである第一号車が完成している。この試作車両は全面溶接で作られた砲塔と車体を持ち、威圧的に伸びた大口径の戦車砲を備えた、従来までの日本的戦車とは大きくかけ離れたスパルタンな外見を有していた。
当時、ドイツ戦車をことのほか恐れていた参謀本部は、“どこから見ても強そうに見える”この試製戦車の外観を見ただけで狂喜乱舞し、富士機甲学校での試験終了を待たずに同車を量産するよう指示を出している。同時に〈チリⅡ〉の車体を使用した各種自走砲の開発も命じた。
〈チリⅡ〉と〈チリ〉の相違点は、通信能力の強化、歩兵支援用とされていた三七ミリ戦車砲の撤去、傾斜装甲の採用といった点である。これらの改良によって〈チリⅡ〉は十分以上に強力な戦車として完成した。もっとも、総合的な戦闘能力では同時代の米独戦車に劣り、改型でM26〈パーシング〉と同程度、Ⅴ号戦車〈パンテル〉には僅かに劣っていた。
特別冒険的な技術を使用しなかったことから量産性や機械的信頼性は高かったこともあり、〈五式中戦車〉は二度の大改装と五度の小改装を受けつつ第三次世界大戦を戦った。〈九式機動戦車〉が量産されるようになった後も主力戦車の補完戦力として地方の小工場で生産が続けられる一方、数々の支援車両の母体としても利用されている。
日米太平洋戦争開戦時、戦車連隊に配備されていた〈チリⅡ〉のほとんどは初期型だったが、工場での生産車は主砲を五式五六口径八八ミリ戦車砲とし装甲を強化した改型に移行していた。
なお、太平洋戦争開戦前に英国に輸出及びライセンス生産された〈五式中戦車〉は、後に主砲を一七ポンド砲としたタイプ五〈ファイア・フライ〉に改造、生産され、英軍戦車部隊の一翼を担っている。
◇要目◇
「五式中戦車」/チリⅡ
■自重:35t ■全備重量:42t ■乗員数:4名
■車体長:6.5m ■全幅:3.05m ■全高:2.8m ■履帯幅:0.6m
■発動機:BMW水冷V型一二気筒ガソリンエンジン改/550馬力
■最大装甲厚:75㎜+25㎜(増加装甲)
■武装:四式七五ミリ戦車砲(五六口径) 1門(66発)
四式一三・二ミリ車載機関砲 1門(200発)
四式七・七ミリ車載機関銃 1門(2000発)
■最大速度:時速45㎞
■航続力:200㎞
「五式中戦車」改/チリⅡ改
■自重:37t ■全備重量:44t ■乗員数:4名
■車体長:6.5m ■全幅:3.05m ■全高:2.8m ■履帯幅:0.6m
■発動機:五式統制二型過給器付直噴空冷V型一二気筒ディーゼル/520馬力
■最大装甲厚:100㎜+25㎜(増加装甲)
■武装:五式八八ミリ戦車砲(五六口径) 1門(56発)
四式一三・二ミリ車載機関砲 1門(200発)
四式七・七ミリ車載機関銃 1門(2000発)
■最大速度:時速42㎞
■航続力:200㎞
「五式中戦車」改Ⅱ/チリⅡ改Ⅱ
■自重:42t ■全備重量:50t ■乗員数:4名
■車体長:6.5m ■全幅:3.05m ■全高:2.8m ■履帯幅:0.6m
■発動機:一〇式統制三型過給器付直噴空冷V型一二気筒ディーゼル/720馬力
■最大装甲厚:105㎜+35㎜(増加装甲)
■武装:一一式九〇ミリ戦車砲(七〇口径) 1門(52発)
四式一三・二ミリ車載機関砲 1門(200発)
四式七・七ミリ車載機関銃 1門(2000発)
■最大速度:時速47㎞
■航続力:200㎞
◇参考◇
「試製五式中戦車」/チリⅠ
■自重:37t ■全備重量:不明 ■乗員数:5名
■全長:7.3m ■全幅:3.05m ■全高:3.05m ■履帯幅:0.6m
■発動機:BMW水冷V型一二気筒ガソリンエンジン改/550馬力
■最大装甲厚:75㎜
■武装:四式七五ミリ戦車砲(五六口径) 1門(100発)
一式三七ミリ戦車砲(五〇口径) 1門(102発)
九七式七・七ミリ車載機関銃 2門(5000発)
■最大速度:時速45㎞
■航続力:200㎞
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