■アマティス公国 〈ダグレント〉級戦艦
ASF, Battle Ship <DAGRENT> class

<性能要目>
耐久力:4800
回避力:12
シールド性能:12
機動力:4
防御力
前面:56 後面:35 側面:42 上面:52 下面:48
ダメージコントロール:1536+35%
搭載機関:大型常温核融合エンジン 6基
搭載兵装
■中央船体/第1船体
   上面
     ボルテクスL 連装88oロングレーザー砲   1基/主砲
    VLS式六連装SSM70サレル発射機   1基/SSM
    VLS式二四連装オルムW発射機   1基/SAM
    CIWS   4基/対空砲
   下面
    CIWS   6基/対空砲
   艦首
    連装ズィーモス発射管   1基/AD
■左右船体/第2、第3船体
   上面
     ボルテクスL 連装88oロングレーザー砲   1基/主砲
    CIWS   2基/対空砲
   下面
    単装30oレールキャノン   1基/副砲
    VLS式三連装SSM70サレル発射機   1基/SSM
    VLS式一二連装オルムW発射機   1基/SAM
   外測面
    CIWS   4基/対空砲
■搭載機
     戦闘攻撃機“ハーディー”            9機
    汎用スクワイエル“タウロス”            9機
実データはこちら

 

<艦級概略>

 〈オルテウス〉級は〈アレギウス〉級戦艦の後継として建造された大型戦艦である。同級はデトロワの〈グロフス〉級に次いだ巨体を持ち、星系でもっとも有力な戦艦の一つとして数えられている。
 しかし、様々な要因から同型艦は建造されておらず、ネームシップである〈オルテウス〉だけが竣工したのみである(E.G.1029現在)。
 そのため〈オルテウス〉は、兵士たちからは(単一艦であることから)親しみを込めて「Big"O"」という愛称で呼ばれている
 〈オルテウス〉級の特徴は艦隊旗艦用戦艦として建造されたことで、このため強力な指揮施設が装備されている。
 その反面、〈アレギウス〉級と比べて火力は別段強化されておらず、直接戦闘能力はオルキスの〈バーナント〉級よりも劣っている。

「Big"O"」という愛称で呼ばれている
 元ネタは“Big-E”エンタープライズ(空母)とビッグ・オー(アニメ)

 

<特徴>

 〈オルテウス〉級戦艦は計画当初〈アレギウス〉級の戦闘能力を強化する事を基本コンセプトとして計画されていた戦艦で、設計段階では〈改アレギウス〉級と呼ばれていた。
 この当初計画における〈改アレギウス〉級は、〈アレギウス〉級の問題であった速力の遅さを新型機関の搭載によって解消し、高速戦艦とするものであった。このあたりの建造経緯は同時期に計画されていたオルキスの〈エルガウェイン〉級と〈バーナント〉級の関係に近い。
 しかし同時期、対デトロワ戦を睨んだ艦隊整備計画が推進されていたデュミナスでは、大量の(そして雑多な)艦艇群を有機的に指揮・運用が可能な艦隊司令部用施設を有する“指揮艦”を必要としていた。
 そのため、艦隊指揮能力を強化するため船体を再設計する事となり、外見を含めた大幅な変更が行われた結果、〈オルテウス〉級は〈アレギウス〉級の面影を残しつつも、全く別の艦として完成するに至った。
 大型艦に対して高い指揮能力を求めるのはデュミナスの伝統だが、その中でも〈オルテウス〉級の指揮能力は破格なもので、数個艦隊を同時に指揮、管制が可能な性能を与えられている。
 これはEBIL-System(イビルシステム──エクステンション・バトル・インフォメーション・リンク・システム)と呼ばれ、艦隊戦における砲撃戦のみならず、多数の航空隊による乱戦も同時に処理する事ができる高い情報処理能力を有するものであった。
 ところが、同級は設計時点ではポスト・レジナン級戦艦の特徴である高い耐久力・優れた加速性・強力なシールド発生装置を備えた有力艦艇として計画されていたものの、デュミナス戦役によって竣工次期が大幅に遅れたため、完成した時には他国の新造戦艦と同程度の戦力しか有していない平凡な戦艦となっていた。
 そのため〈オルテウス〉級はデュミナス軍内部では戦力が低いと不評で(排水量でデトロワの〈グロフス〉級戦艦に次ぐ大きさを持っているにもかかわらず他国が保有しているポスト・レジナン級戦艦と比べて突出した戦闘能力を有していないため)、大きな問題と考えられている。
 しかし、“指揮専門艦によって統率のとれた艦隊運用を可能ならしめる”というコンセプトは他国からは高く評価されており、攻撃力の低さは大きな欠点ではないのではないかと言われている。

 〈オルテウス〉級は新型艦であるにもかかわらず攻撃力の面で〈アレギウス〉級とほぼ同程度の戦闘力しか有していない。
 これは、〈オルテウス〉級が主砲として搭載している88ミリレンズ口径レーザー砲“ボルテクスL”が〈アレギウス〉級で採用された“ボルテクス”砲を改良し遠距離砲戦能力を強化したものであるためで、破壊力自体は従来砲と変わっておらず、攻撃力の上昇には結びついていないからである。
 また、副砲として30oレールキャノンを装備しているが、これとて〈アレギウス〉級と同じものであり、打撃力が強化されたわけではない。
 速力についても、大幅に機関推力を増大したものの船体重量が増えたことで相殺され、速度面においても列強戦艦の中で平凡な位置に留まっている。なお、機関出力の増大のためダメージ・コントロールを重視した小型機関の多数装備が不可能となったため、〈オルテウス〉級は新設計の大型常温融合炉の搭載に踏み切る事になった。
 外見上の特徴として、〈オルテウス〉級は「多胴船体方式」を採用し、中央船体下部に艦載機格納庫を配置するという形となっている。
 そのため同級は、EBIL-Systemの採用といった点以外では〈アレギウス〉級と大差ないように言われることも多いが、個々の面でみると同級は多くの新機軸を採用しており、従来のデュミナス戦艦と異なった点も多い。
 まず、最も特徴的なのが〈オルテウス〉級の船体配置である。
 〈オルテウス〉級は〈アレギウス〉級の二倍もの長さのある中央船体(第一船体)の後半部斜め上方に左右船体(第二・第三船体)を置いている。
 正面から見てちょうど逆三角形状をとるこのようなスタイルは、当然ながら中央船体上に配置された一番主砲の射界を(特に側面方向に対して)大きく制限する事になる。
 このように、戦艦である〈オルテウス〉級が攻撃力を犠牲にしてまで中央船体よりも高位置に左右船体を配置したのは、同級が艦載機の運用を重視したたためであった。

 E.G.1010年代における艦載機の進歩は急激なもので、近い将来艦隊戦において十分な戦力となりうることが各国の軍関係者の間で予想されていた。
 このことは、仮想敵国と比べて戦力劣勢であった当時のデュミナスにとって大きな期待を抱かせる材料であり、航空機という新兵器によって数的劣勢に置かれている自軍艦隊の戦力を大幅に強化できると考えられたからである。
 しかし、〈アムレード〉級空母が実際に艦隊に配備されるようになると、他国空母と比べ搭載機数が劣ることが問題となり、敵艦隊への攻撃と自艦隊のエアカバーを同時に行うことが困難という現実に直面する。
 これを受けてデュミナスでは、戦艦に自力で防空戦が行えるだけの航空運用能力を持たせる事で空母に搭載された航空兵力を攻撃のみに使用することを考えたのである。
 折しも、デトロワとの領土問題から対外的な危機に陥ろうとしていた事もあり、デュミナスではこの新構想に基づいて急ぎ〈オルテウス〉級が建造されることになった。
 この時搭載機として選ばれたのは、新型空母〈レオニダス〉級に搭載するため計画され試作機が最終審査段階にあったFY5(後のFA5〈ハーディー〉)であった。
 しかし、〈オルテウス〉に搭載が予定されたFY5の飛行特性は、よく言えば敏感、悪く言えばピーキーで、前型機と比べて大幅な性能向上こそあったものの、その操縦性は万人向けなものとは言い難かった。
 そのため、同機の運用には細心の注意が必要とされ、発着艦時の安全性を高めるべく第二・第三船体を高い位置に置く事で発着艦スペースに余裕を設け(着艦失敗による格納庫の被害を局限する意図もあった)、〈アムレード〉級空母並の航空艤装を備えることとなったのである(〈ハーディー〉の開発が失敗したときのため、〈レイモス〉艦戦や〈ガンボルト〉艦攻の運用も可能なように余裕を持たせる必要もあった)。
 こうして〈オルテウス〉級はデュミナスで初めて艦載機運用を前提として設計された戦艦として完成したのである。
 当時の大型艦で設計段階から航空艤装について考えていたものは少なく、その運用スペースは惑星攻略用のスクワイエルを搭載していた場所を拡大しだだけのものが殆どで、安心して航空機を運用できたわけではなかった。そういった事を考えると、空母並の発着艦能力を持つ〈オルテウス〉級の運用実績は良好なものであった。
 実際〈オルテウス〉は、第二次星系大戦の後半において軽空母に匹敵する搭載数をいかし、暫定的なエアカバーを艦隊上に構築する事で〈シルグノーム〉級による後方司令部の襲撃を幾度か撃退している。
 しかし、“戦艦”としては、主砲の射界を妨げるスタイルは明らかに問題であり、突撃以外での運用──交差戦や反航戦での使用──が難しい艦となっているため、一部の砲術関係者からこのような兵装配置について疑問の声もある。

大量の(そして雑多な)艦艇群
 デュミナスは建国してから30年程度の若い国であり、主要艦艇のほとんどは自国製になっていたものの、二線級の部隊では元宗主国であるアマティス製の艦艇や技術習得のためにオルキス、ラファリエスなどから購入した艦艇も相当数が存在していた。その上、戦争に備えて内惑星連合諸国に大量の艦艇を発注している。これらを統一的に指揮には相当な問題があった。

大型艦に対して高い指揮能力を求める
 国力的に大艦隊を持てないため、デュミナスでは部隊の整備方針として少数精鋭主義を採っていた。そのため、通信能力の強力な“指揮艦”が必要とされていた(雑多な艦艇群を統一指揮するためにも必須であったという理由も大きい)。

ポスト・レジナン級戦艦
 いわゆる高速戦艦のこと。

デュミナス戦役によって竣工次期が大幅に遅れたため
 級歴参照。

速度面においても列強戦艦の中で平凡な位置に留まっている
 とはいえ、アレギウス級戦艦と同程度の機動力はあり、統一行動では問題とはなっていない。指揮艦だけが突出するのも問題であるから、これはこれでいいのであろう。

「多胴船体方式」
 単一の船体でなく、複数の船体によって船を造る方式。被害を局所で抑えられるため、危険物を扱う輸送船や軍用艦船で採用されることが多い。防御面では有利であるが、船内スペースの確保に問題が生じるため、軍用艦船における全面的採用はデュミナス以外ではない(「半多胴船体方式」が主に採用されている)。

兵装配置について疑問の声
 艦隊突撃を主要な戦術にしているデュミナスでは前方に対しての火力の集中が重要視されているため、大きな問題とはされていない(ただし、不満はあるようだ)。

 

<級歴>

 〈オルテウス〉級は、多数の建造が計画されたものの、周囲の環境が激変したことでわずか1隻の完成に留まることになった数奇なクラスである。
 元々〈オルテウス〉級はE.G.1022年度の「第五次宇宙艦隊整備計画(D計画)」において、旧式化した二隻の〈ブレナント〉級巡洋戦艦の代艦として建造が計画された戦艦だった。
 この「D計画」は元々艦齢の超過した旧式艦の代わりに新造艦を同数建造するというもので、純粋な軍備近代化計画であった。
 ところが、惑星公転によるデトロワ領トノスとデュミナス本星の惑星接近による国境線の交錯問題からデトロワとの関係悪化が進んだこともあり、防衛上の観点から急速に軍備増強を計ることとなった。
 こうして、デトロワとの領土接触が始まる二年前のE.G.1020年、第三九回デュミナス王国臨時国会において今年度中から臨時予算によって艦艇整備を行う「宇宙艦隊緊急整備計画」が承認される一方、二年後に開始される「D計画」を拡大した「改・第五次宇宙艦隊整備計画」の概略も了承されることになった。
 これらの計画で〈オルテウス〉級は「改・第五次宇宙艦隊整備計画」の中で三隻を、次いで翌々年の「第六次宇宙艦隊整備計画」では五隻の建造が予定され、最終的に一六隻もの多数が建造される事となった。
 しかし、一刻も早く同級の完成を欲していた宇宙軍は「改・第五次整備計画」の始動前に実働していた「宇宙艦隊緊急整備計画」において、予定されていた〈アレギウス〉級一九番艦の予算を流用することで一隻を繰り上げ建造することとなった。
 だが、当時の〈オルテウス〉級は最終試案こそ纏まっていたものの、未だ設計は完全に完成していなかったこともあり、〈オルテウス〉の設計に当たっては一刻も早い実戦化のために技術的冒険をさけ、ハード面で特に目立ったシステムを採用しなかった(〈オルテウス〉級はその目玉であったEBIL-Systemだけでなく、すでに〈レオニダス〉級空母で採用されている新型シールド発生装置の採用すら見送った。これらの問題は後期製造艦でなおしていくこととされた)。
 こうした各部の努力と妥協によって〈オルテウス〉級の起工は急がれ、最終設計案が完成したE.G.1021末にネーム・シップである〈オルテウス〉が第二宇宙軍工廠第四船渠で起工され、次いで翌年には「改・第五次整備計画」の三隻の〈オルテウス〉級が起工されたのである。
 しかし、竣工が待ち望まれた〈オルテウス〉級であったが、その完成前にデトロワとの戦争が始まってしまう。
 そのため、手間のかかる新造艦の建造よりも損傷艦の修理が優先されることが決定され、五番艦以降の起工は中止、すでに起工されていた一〜四番艦も最も建造の進んでいた一番艦〈オルテウス〉を除いて解体する事となった。
 その後戦局は一進一退を繰り広げていたが、開戦七ヶ月目に至りデュミナス本星はデトロワ軍の奇襲攻撃により陥落、建造中の〈オルテウス〉はデトロワ軍によって接収されることとなった。
 この時、〈オルテウス〉は七五%まで完成している。
 だが、デュミナス星が占領された後もデュミナス王国軍の残余は徹底抗戦を唱えデュミナス解放軍を結成、戦争は終結することなく更に激しい戦闘が続くこととなる。
 このためデトロワ軍は接収した完成間近の〈オルテウス〉を自国軍に加えるべく工事を再開させたが、デュミナス国民のサボタージュ等で作業は遅々として進まず、完成度が95%に達しようやく稼働させられるようになった時にはデュミナス本星攻防戦が開始されていた。
 この渦中、敗北を悟ったデトロワのデュミナス占領軍は占領地の軍事施設破壊のために残余艦艇の一部を宇宙軍工廠に派遣したが、第二宇宙軍工廠第四船渠で工事が続けられていた〈オルテウス〉は未完成にも関わらず固定砲台として応戦しこれを撃退、〈グデーフ〉級駆逐艦1隻を撃沈している。
 デュミナス本星奪還後、〈オルテウス〉は計画通りデュミナス軍が運用する事となり、破棄されていた二番艦以降(デュミナス戦役での戦訓を取り入れ、改〈オルテウス〉級と呼ばれていた)の建造も再開される事となった。この時、〈オルテウス〉にはEBIL-Systemをテストベッドとして搭載することになり、ようやく原計画通りの性能を有することとなったのである。
 こうして、ようやく竣工した〈オルテウス〉は、第二次星系大戦にデュミナス軍派遣艦隊総旗艦として参加。ラファリエス遠征軍の一翼を担っている。
 この時〈オルテウス〉は、遊撃隊の司令部として〈シルグノーム〉級による後方襲撃で指揮が混乱し劣勢に陥った前線を駆けめぐり、戦線の崩壊を支え続けた。
 その後、〈オルテウス〉級は、フェール軍縮条約で決定したデュミナスの戦艦保有量である12隻体制を維持するためにすでに完成している〈オルテウス〉をのぞき全て破棄されることとなり、船台上にあった二番艦以降は解体されている。
 戦火が遠のいた現在でも、同級はデュミナス艦隊の総旗艦として現役の座にあり、これから長く活躍すると思われる。

第二宇宙軍工廠第四船渠
 地上に建築されている軍直営の大型工廠。戦艦などの大型艦のネームシップは全てここで建造されていた。第四船渠は〈オルテウス〉建造のためにわざわざ拡張されたことで有名。
 元ネタ戦艦大和(大和は呉海軍工廠第四船渠で建造)。

 

<EBIL-System>

 〈オルテウス〉級を特徴づける強力な指揮能力──EBIL-Systemは以下のようなシステムで構築されている。
 通常、軍艦は直接外部を見ることの可能な展望艦橋(航海艦橋)と船体のヴァイタル・パート内部に設けられた戦闘指揮所(CIC/コンバット・インフォメーション・センター)の二つの指揮施設を持っており、前者は通常航行時に、後者は戦闘中に使用される。
 しかし、これらの指揮施設はあくまでも艦長以下が指揮する個艦用の司令部であり、能力的に複数の艦艇による部隊を運用する事は難しい。
 そこで、司令官レベルでの迅速な対応を行えるよう艦隊司令官が乗座する艦にはCICの指揮機能を強化した艦を当てることで指揮を円滑に行えるようにするのが普通であった。
 ところが、同級ではそれまでの軍艦とは異なり、従来のCICの他に新たにFCC(艦隊司令室/フリート・コマンド・センター)を設けるという独特な型式を採用したのである。
 FCCとは、簡単に言えば艦隊指揮官が命令を下す司令部のことで、艦隊幕僚以下の司令部要員が乗り込み、艦隊全体を指揮・管制する場所である。
 従来の戦闘では戦況の分析は艦隊司令官の乗る艦のCICで一括して管理していたため、旗艦の艦長と部隊指揮官が同じ部署で異なる命令を出す必要があった。
 当然、このような体制では兵器技術の進歩により戦闘時間が短くなる近代戦に早晩対応が困難となるであろう事は疑いなく、各国では憂慮すべき事態と認識されていた。
 しかしデュミナスは司令官用の命令施設としてFCCを独立させることでこれに対応したのである。
 このシステムの採用によって指揮系統が整理され、CICは個艦分の命令を下すだけですむようになり、艦隊司令部はFCCで艦隊指揮に注意さえしていれば良くなった。
 このため、艦隊指揮官は艦長と同じ司令室に同居して命令を下す必要が無くなり、間接的には艦隊指揮官がすべての艦艇を公平な立場で見ることができるようになったのである。
 ほぼ同様の意図で建造されたものとしてデトロワの〈グロフス〉級戦艦が挙げられるが、〈グロフス〉級戦艦が移動可能な“総司令部”として長期の作戦指導設備が整っているのに比べ、〈オルテウス〉級は戦闘時における部隊指揮に重点を置いた“前線司令部”としての能力が与えられている。
 こうした高い実用性を持ったFCCには従来のCICで使われているものの二倍の能力を持ち、艦隊運用に特化した型のタクティカル・コンピューターが設置されている。これによって、急変する戦況を逐一認識し、情報を適切に処理することが可能であった。
 そのため、それまでの軍艦と比べて段違いに強力な指揮能力を有する事になった同級は、第二次星系大戦で艦隊総旗艦として活用され、非常に良好な結果を出している。
 最も、さすがにその性能も完璧なものではなく、戦局が長引けば最終的には情報処理能力が飽和してしまう事が第二次星系大戦で明らかとなっている。ただし、そこに至るまでにかかる時間は最低でも他国艦隊の倍程度とされており、敵艦隊の方が先に指揮を喪失することがほとんどであるため、大きな問題となっていない。
 このように優れたFCC方式であるが、問題として多数の艦艇が参加する“艦隊決戦”以外ではあまり使いでがないと言うことが挙げられる。
 その理由として、FCCに別個で装備された戦術コンピューターがあくまでも大規模戦闘における戦術解析能力を重視してプログラムされているため、小部隊による遭遇戦のような形式を取った場合あまり戦局に寄与できないからだ(有効であることは間違いないが、必要と思われるほどのものではない)。
 もっとも、〈オルテウス〉級のような“弩級戦艦”が参加する会戦は、常識的に考えて大規模戦闘──艦隊決戦となることに間違いはないため、致命的な欠点ではないと言われている。

CIC(コンバット・インフォメーション・センター/戦闘指揮所)
 CCC(コンバット・コマンド・センター/トリプルC)とも呼ばれる船体内部に設けられた戦闘時の司令設備。戦闘艦橋と呼ばれることもある。大抵、司令長官は旗艦の戦闘艦橋に艦長と一緒にいる。

FCC(フリート・コマンド・センター/艦隊司令室)
 艦隊司令用に設けられた作戦司令部。通常、CICと一体化しているが、〈アレギウス〉はこの機能を分割し、独自の設備とした。航海参謀や航空参謀が居並ぶ。艦隊の航空指揮官もここで命令を下す。