■日本軍における階級について |
階級 | 階級名(古代)参考 | ||||||||
階級名 | 指揮兵力 | 官位(近代) | 官位(古代) | 近衛府 | 中衛府 | 外衛府 | 兵衛府 衛門府 |
検非違使 | 参考 |
正二位 | 正二位 | 左大臣 右大臣 内大臣 |
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従二位 | 従二位 | ||||||||
正三位 | 正三位 | 大納言 | |||||||
元帥(大将) | 従三位 | 従三位 | 近衛大将(長官) | 中納言 太宰府帥 |
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大将 | 総軍司令官 方面軍司令官 軍司令官 |
正四位 | 正四位上 | 中務卿 | |||||
正四位下 | 中衛大将 | 別当(特) | 参議 卿 |
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中将 | 師団長 | 従四位 | 従四位上 | 外衛大将 | |||||
従四位下 | 近衛中将(次官) | 中衛中将 | 督 | ||||||
少将 | 旅団長 | 正五位 | 正五位上 | 外衛中将 | |||||
正五位下 | 近衛少将 | 中衛少将 | |||||||
大佐 | 連隊長 | 従五位 | 従五位上 | 外衛少将 | 佐 | 佐 | |||
従五位下 | 少納言 | ||||||||
中佐 | 正六位 | 正六位上 | 近衛将監(判官) | ||||||
大隊長 | 正六位下 | ||||||||
少佐 | 従六位 | 従六位上 | 大尉 | 大尉 | |||||
従六位下 | 中衛将監 | 外衛将監 | |||||||
大尉 | 中隊長 | 正七位 | 正七位上 | 少尉 | 少尉 | ||||
正七位下 | 近衛将曹(主典) | ||||||||
中尉 | 従七位 | 従七位上 | |||||||
小隊長 | 従七位下 | 中衛将曹 | 外衛将曹 | ||||||
少尉 | 正八位 | 正八位上 | |||||||
正八位下 | 大志 | ||||||||
従八位 | 従八位上 | 少志 | |||||||
従八位下 |
勅授は■。奏授は■。
日本軍では階級の上昇とともに勲章や官位も与えられるようになっています。そこで、与えられる官位と律令官位とを比べてみました。これは日本陸軍の階級と律令体制下の日本の官位相当官を比べたものです。
何でこんな事をしたかというと、旧軍の階級あたりの指揮兵力が世界平均からみたらどうにも偏っている(特に将官クラスにおいて)のは、何らかの理由があるのではと考えてみたためです。
元々階級というものは各国の都合によって決められるものであり、グローバルスタンダードがあるわけではありません(大兵力を常備しなければならない国は将官クラスの数が多いですし、同国の陸海空軍でも数が変わったりするのは当たり前です。そもそも、日本のように同じ名称で階級を呼んだりしないのが普通です。例:陸軍大佐=コマンダー、海軍大佐=キャプテンと呼ばれるのが一般的です)。
一応、大きく分けて将官(軍団の指揮)、佐官(戦闘部隊の指揮)、尉官(兵士の直接指揮)という3つに分けられる様ではありますが、これがそれぞれいくつに別れるかというのはお国柄によって全く変わってきます(尉官はたいてい3種類ですが英国海軍は2つですし、将官は2から5と各国でも相当なばらつきが存在します)。
しかし、日本軍はきっちりと上中下の三つに別れています(一時期海軍は中佐、中尉が存在しない時期がありましたが)。准将(海軍では代将)は正式に認められていないのですね。
ところが、部隊の先任大佐を准将(代将)として扱うという事例はきっちりと存在しています。これは世界基準(欧米列強の基準)に合わせた措置でしょう(欧米では当たり前のように行われる階級配置ですから、日本としてみれば、無ければ共同作戦時などで問題になってきますから)。
閑話休題。
ということで、改めて表を見ると、日本では階級をむやみに増やすことは出来ないことがよくわかります。
たとえば、少将の下に准将を作ったり大将の上に上級大将を作ったりすれば、同じ官位を与えることにしない限り、国勢を担当する各種大臣との官位が逆転しかねなくなります。
同時に、尉官だろうが佐官だろうが階級を増やすのも困難です(将官と同様の理由により)。
現在はまだ調べていませんが、高等官のランクによる文武官のランクも比べてみるつもりです。記憶の範囲では国務大臣は大将と同列だったと思いますので、(記憶が正しいなら)やっぱり下手に階級を増やすのは難しいと思われます。
このため、いきおい日本軍は少将を他国の准将クラス(旅団指揮官)とし、中将を少将クラス(師団指揮官)としたのでしょう(そして、師団を束ねる立場に大将を持ってくる)。
もちろん、最初から将官階級を4つにでもしておけば事態は変わったのでしょうが、大中小以外に4つ目の文字を作るのは無理という日本語上の問題もあり(一将、二将、三将、四将という方法もあるが、いまいちだし……)、さらには、近代軍(欧州各国の)で当時採用されていた分け方と律令制の例を参考にした場合、このような形になるのも仕方ないと言うところでしょうか。
ところがこの措置は複数の軍を纏める総軍が編成されることで、日露戦争でいきなり崩壊する事になります(まあ、大山巌大将は当時元帥に列されていたため、それほど問題とはなっていないんですが(注))。そして、戦線が拡大し複数の総軍を編成する羽目になった日中戦争、総軍と軍の間に方面軍を作らねばならなくなった太平洋戦争と、状況は悪化していくのですが、それでも将官位の増加は最後まで行われることがありませんでした。
注:大山大将は当時元帥に列されていたため
日本軍における元帥とは、大将で格別の功のある人物に与えられる名誉職のことで、あくまで制度上は大将となります。正規の階級ではないわけです(律令制における令外の官のようなもの)
終戦時には日本軍の師団長は少将がなることもあったので、もし戦後も軍が存在していれば、旅団を廃止して師団指揮官を少将、軍指揮官を中将、総軍指揮官を大将にしたのではないかと思われます(このとき、元帥職を正規の階級にする可能性もある)。