■主 力 艦
Main Ship
◇宇宙軍の象徴
 主力艦とは、宇宙艦艇の中で「直接砲戦で勝利をおさめること」を主目的に建造された大型戦闘艦の事をいう。敵を撃破するため、彼女たちはすべからく強力な砲と厚い装甲を有しており、非常に高い戦闘能力を誇る。
 戦闘能力の高い主力艦は宇宙艦隊の切り札であり、そのため各国の軍事力は主力艦の保有量で比べられる事も多い。
 各国でまとまった数の重巡が建造された事により宇宙軍にしめる相対的な地位は低下したが、宇宙艦の中でもっとも高い攻撃力と防御力を持つ彼女たちが有力な軍艦であることに違いはない。
 E.G.1034現在、戦艦はフェール軍縮条約によって建造が制限されている。
 なお、“主力艦”という分類は、第二次星系大戦後に結ばれたフェール軍縮条約によって決定されたもので、純粋に軍事的要求から発生した名称ではない。そのため、通常は“戦艦”と呼ばれる事も多い。

 

■戦艦        

BATTLE SHIP/BB

アレギウス級戦艦  戦艦はその名の通り戦闘を行い勝つために建造された軍艦であり、他の艦種と比べて最も高い攻撃力と防御力を持つ。
 そのため、艦隊戦において無類の強さを誇る戦艦を撃退するには、相手も戦艦を投入するか多数の補助艦艇や艦載機による一斉襲撃を行わなければ不可能とされている。
 しかし、高い戦闘力を持つためには大きな船体が必要であり、他の戦闘艦と比べて建造に必要な費用・期間・運用人員等が大きくなることから、経済力のある大国でなければまとまった数の保有が難しい。
 このため戦艦という存在は、保有国の戦力というより軍事力の象徴──キャピタル・シップとしての意味も大きい。

 以上のようなことから、戦艦の建造には国家の威信が懸けられる事となり、各国は様々な独自性の高い艦を建造する事となった。
 結果、各国は戦艦の損失を恐れ、戦場に戦艦を投入することをためらう事が多かった。参加国の総力戦となった「エレミア星系大戦」においても戦艦の参加した会戦は全体の一割を越えていないというデータからもそれが伺える。
 しかし、戦艦の存在が無意味であったわけではなく、ひとたび戦線に投入されると戦艦は大火力と重防御によって縦横の活躍を示した。 現在竣工している戦艦の中でもっとも特徴的な艦は、大胆な多胴船体方式を採用したデュミナスのアレギウス級戦艦が挙げられる。
 星系大戦が終結した現在、主要各国が保有する戦艦の大半は「デュミナス戦役」(E.G.1024)の戦訓によって建造が開始された高速戦艦に切り替えられている。

 

■巡洋戦艦        

BATTLE CRUISER/BC

デーベルン級巡洋戦艦  巡洋戦艦とは、戦艦と同様の砲火力と巡洋艦に匹敵する機動力を備えた大型戦闘艦の事で、後述の「装甲巡洋艦」が進化したものである。
 反面、元が装甲“巡洋艦”であるため戦艦と比べると防御力は低く、他の主力艦との本格的な砲撃戦を行うには非常に困難が伴った。
 しかも、大馬力の機関を搭載する必要から建造コストは戦艦と殆ど変わらなかったこともあり(同排水量の戦艦より高くなることすら希ではなかった)、費用対効果に疑問を持った国も多く、星系でこの種の艦を保有する国は現在、ラファリエス、デトロワ、デュミナスの三カ国しか存在しない。
 このうち、デュミナスの巡洋戦艦は十分な対応防御がなされた軍艦として建造しており、実質的には高速戦艦と言ってよいものとなっている。
 一方、デトロワでは巡洋戦艦の高速力と航続力の長さを生かして自国領域の警備や軍事行動の尖兵として使用しており、実質的には(主力艦でなく)大型巡洋艦といってよい。
 特徴的なのがラファリエスの巡洋戦艦で、こちらは艦隊戦における高速襲撃を重視して建造されたため両者の中間的な性能を持っている。
 巡洋戦艦はデュミナス戦役において高速を生かした機動戦で高い戦果を挙げる一方、防御力の不足から本格的な砲戦での生存性が低かった。しかも、この問題は巡洋戦艦の特徴である低い防御力に原因があるため、事態の解決は不可能であった。
 こうした結果、巡洋戦艦の将来性に疑問を覚えた保有国は軽防御の従来型巡洋戦艦の建造を中止し、高速戦艦の建造に移行した。
 なお、星系大戦に参加した巡洋戦艦は、改造や再設計によって戦艦並に防御を強化した実質的な高速戦艦となっている。
 現在、星系でもっとも著名な巡洋戦艦は、デトロワの〈デーベルン〉級である。

 

■高速戦艦        

HIGH SREAD BATTLE SHIP/BB (POST LEGINAN type)

改エルガウェイン級戦艦  「デュミナス戦役」における戦訓は、必要なとき必要な場所に自国艦を相手より先に展開できねば、戦場における勝利を得ることができなくなってしまうというものであった。つまりこれは、機動力に劣る艦艇は変化する戦局に対応する事が難しいということが示されたわけである。
 このため、速力に劣る従来型の戦艦では近代戦闘に対応することが困難と結論づけられたことから、各国は速力を強化したニューコンセプトの戦艦を建造することとなった。これが“高速戦艦”である。
 この、新時代に対応した新型戦艦は軍事関係者の間で"ポスト・レジナン級"(高速戦艦の有効性が知られる事になった戦場の名から採られた)と呼ばれている。
 高速戦艦は、単位重量あたりの機関出力がそれまでの戦艦と比べて約二倍にまで増強されたことで巡洋戦艦並の機動力と戦艦並の防御力を備えた理想的な戦艦となった。
 これらの新型戦艦達は星系大戦に参加し、兵器と戦術の進化によってより凄惨なものとなった戦場でその能力を十全に発揮した。
 しかし、高速戦艦はそれまでの戦艦と比べて建造にかかる費用がより一層増える事となり、数を揃えることがますます困難なものとなってしまった。
 一般的に、E.G.1024年以降に起工された戦艦はレジナン会戦の戦訓を取り入れているため、すべてこの範疇にはいると考えて良い。これらの内で特に有名なのがオルキスの改エルガウェイン級戦艦である。

 

■航空戦艦        

BATTLE CARRIER/BV

 →「航空母艦」の項を参照。

 

■海防戦艦        

COAST DEFFENSE BATTLE SHIP/BE

 惑星における衛星軌道の警備のために建造された小型戦艦。
 主目的が警備にあるため、船体は小さく、火力は大きく、航続力と速力は小さく、防御力はそれなりに……、をコンセプトに設計されている。
 なお、一部の艦には宙難事故に備えて簡易工作艦としての能力を備えたものもある。
 戦闘能力としては重巡洋艦を独力で撃退できる程度であり、本格的な“戦艦”との戦闘は想定されていない。
 一般にこの種の任務は巡洋艦や駆逐艦の様な小型艦がこなすことが多く、あえて単能の海防戦艦を建造する国は少ない。主に、「大国の近傍に位置するものの、戦艦を建造する国力のない」国や、「資源の豊富な衛星が軌道上に存在するために宇宙軍を整備しなければならない」国などで海防戦艦が使用されている。
 航続力が短い事から外洋航行能力のない海防戦艦はあくまでも防衛戦力であり、平時を維持することを主目的に運用される“抑止力”としての艦といえる。
 星系主要国はいずれも海防戦艦を有していない。
 なお、航続力の大きな海防戦艦はポケット戦艦と呼ばれることもある。