■ ガンダム世界における艦艇達・地球連邦篇
 〜U.N.T's War ships in "THE GANDAM WORLD"

 ガンダムにおける軍事小ネタ集です。ゆえに内容は徒然。

■ 初めに 〜艦艇考察序説〜

 軍艦は兵器です。そのため、多くの場合それぞれの性能の(カタログデータ的な)優劣が語られ、論議されます。
 この個艦ごとの「性能比較」はたしかにわかりやすい評価方法の一つでしょう。
 ですが、この評価がそのまま戦争における性能になるかといえば、そうでもありません。国家レベルで見た場合、軍事力の比較に置いてこの方法はあまり意味を持たなくなってきます。なぜなら、艦艇とはあくまでも軍事行動を行うときに使われる“道具の一つ”であり、究極的には保有国の整備している“戦争遂行のシステム”における部品でしかないためです(逆に言えば、兵器はある目的のためのこれだけの性能が必要とされ、必要なだけ作られる……と言うことです)。
 そこで、ここではガンダム世界における各種艦艇を『その装備がなぜ必要とされているのか?』という点に的を絞って考察してみたいと思います。つまり、戦争計画における部品としての価値を探るというわけです。そのため、スペック云々というのはここではあまり重要視していません(大筋としての流れさえ掴めればよいという程度の認識です)。もしその種のデータを調べたい方は専門のガンダムサイトを訪ねられるとよいでしょう。

■ 一年戦争

 一年戦争とは、ジオン公国と連邦の間で行われた宇宙世紀初の国家間戦争です。その内容はここで詳しく語ることもないとおもいます。物量に勝る連邦軍は、最終的には数によってジオンを圧倒し勝利を収めました。
 さて、この戦争の間に連邦で建造・使用された艦艇は大まかに分けて以下の6種です。

   ・大型戦闘艦  マゼラン級戦艦
   ・小型戦闘艦  サラミス級巡洋艦
   ・特殊任務艦  ペガサス級強襲揚陸艦
   ・輸送艦  コロンブス級輸送艦
   ・戦闘艦を利用した正規空母
   ・その他各艦種からの改装空母

 ペガサス級は資料によって戦艦とも空母とも言われてますがここでは人口に膾炙した艦種に類別しています。また、正規空母とは当初から宇宙戦闘機を運用するように考えていた艦。一方、改装空母は応急的に宇宙戦闘機を運用可能にした物です(出典は小説等)。

 さて、ジオン共和国(ジオン・ダイクンが建国した、ジオン公国の前の国です)が成立する前までは、連邦には宇宙軍は存在していませんでした(0058/9/14:サイド3独立宣言。ジオン共和国樹立。国防隊発足。0059:サイド3に対し連邦政府による経済圧力。治安維持名目の宇宙軍設立)。しかし、ジオン共和国が国防隊を発足させたことで宇宙空間における軍事力を整備する必要性を感じた連邦軍はそれまでの陸海空軍とは別に新たな軍種として宇宙軍を設立します。当然ながら、連邦が新設された宇宙軍に求めていた役割は、防衛と、なにより宇宙における連邦の影響力を示す事(つまり、ジオン軍からの防衛と、サイド3と同様の独立行動を行いかねない他コロニーへの威圧)でした。

 こうして、戦前(ジオン独立戦争前)から連邦宇宙軍の戦闘部隊としてマゼラン級戦艦とサラミス級巡洋艦が建造されることとなりました。このとき、マゼラン級は対抗艦であるチベ級戦艦(当時。のち重巡洋艦)を撃破可能な戦闘力を求められ、一方、巡洋艦であるサラミスは(当時のジオンに同級艦がなかったこともあり)警備任務を主体とした「長大な航続力」を有するものとして設計されることとなりました(結果、その攻撃力は小型艦や戦闘機などを撃退できる程度の「適当な火力」で押さえられることになりました。後年(一年戦争後)、大幅に火力を強化した改型が作られていることからも判るように艦自体の助長性はあったのです)。
 とはいえ、少なくともこの時期の連邦軍は艦船設計に関しては試行錯誤の時代だったとも言えるでしょう(ミノフスキー物理学の進歩によって連邦でメガ粒子砲を装備したのはこれらの艦が初めてという事情もあります)。

 一方のペガサス級は連邦初のMS運用母艦として建造された代物です。この艦は様々な意味で特殊な存在でありましたが、このような特殊任務艦が建造された背景としてジオン公国の成立による軍事的な不安があったのは疑いない所でしょう。
 同級はそれまでの連邦軍の軍事ドクトリンから、マゼラン級戦艦やサラミス級巡洋艦の代わりとしての役目(単艦での警備及び威圧)をこなせる事を目的としていたと思われます(もっとも、同級の建造について連邦はその運用ドクトリンを練り切れなかったのではないかという疑問もあります。ペガサス級は、運用目的を纏めきれなかった結果、計画が肥大化して万能艦となったしまったともとれるからです)。
 付け加えるならば、ペガサス級の建造・運用は宇宙軍が行っていることから、当然ながら搭載機であるMSも宇宙軍が行っています。この当時の宇宙軍は主要戦場が宇宙だけではなく地球や月面でも戦闘を行う可能性を考えていたと言うことでしょう。

 最後のコロンブス級ですが、これは艦隊のサービス部隊として各種支援任務を行うべく建造されています。そのため、適当な速力とそれなりの能力を持つ船体のごく普通の船として建造されており、別段特殊な性能を有してはいません。もっとも、この種の艦に必要なのは「量」であり「支援体制」でありするわけで、艦自体に大きな問題があったわけではありません。

 これらの艦艇は様々な問題を抱えながらも一年戦争を戦い抜きましたが、その中でも最も重要だったのが「MSの運用」という問題でした。ジオン艦艇がムサイ以降最初からMSの運用を考慮に入れた艦艇を建造していたのに比べ、空間戦闘機──いわゆる宇宙戦闘機の運用しか考慮していなかった連邦軍は一年戦争の間に(ジオンの保有するような)満足な性能を持つMS運用戦闘艦を建造できませんでした。
 そこで、これを補うべく連邦軍は艦隊にMS運用母艦──いわゆる軽MS空母を配備することで部隊性能を総合的な面から強化する事にしました。
  この目的のために建造されたのがコロンブス級改装空母であるアンティータム級です。同級が1隻で20機以上という多量のMS運用能力(ジオン軍のムサイ級巡洋艦は3機)を持っているのはまさにこのためなのです。

 つまり連邦軍は、初めての大規模戦争を「艦隊戦を行う戦艦+巡洋艦部隊」と「それを支援するMS母艦」の2種を組み合わせて打撃部隊を運用することで戦い抜いたのです。
 付け加えるなら、V計画(におけるヴィンソン計画)によってジオン軍よりも多量の艦艇を建造している連邦は、MSに「敵MSの排除」を求めることになります。艦艇数で勝る彼らは、ジオン軍のように「対艦攻撃」をMSの主要ミッションに置く必要がなかったのです(注1)。一年戦争の活躍によって主要兵器と位置づけられたはずのMSは(少なくともこの時期は)単なる艦隊の傘であり(注2)、あくまでも艦隊決戦時の支援兵力に過ぎませんでした(注3)。

注1:
 連邦宇宙軍は対MS用としてジムに低威力・広有効範囲のビームスプレーガンを主要装備として持たせています。ジオンが一撃必殺のジャイアントバズ等を必要としていたのとは対局の考え方といえます。

注2:
 なお、連邦としてはMSの仕様目的を「艦隊近距離における対MS迎撃戦闘任務」に絞ったからこそ、マゼラン級戦艦やサラミス級巡洋艦の船体外部へ無理矢理搭載するといった強引な方法でMSを配備しても整備面で大きな問題とならなかったのだということも出来ます(当然、大規模な整備は後方にいるMS母艦で行います)。あるいは、結果的にこの方法しか採れなかったとも言えるかもしれませんが。

注3:
 もっとも、これには当時のMSの作戦半径が恐ろしく短かったことが大きな原因です。戦艦同士が砲戦を行っているような距離でしかMSが戦闘を行えないというのが当時のMS性能の限界であり、故に艦艇同士による直接砲戦の重要性はけして低いものではありませんでした。

 さて、ここで疑問となるのが「連邦はなぜ一年戦争を(あれほど高い戦果を上げた)ペガサス級の量産で切り抜けなかったのか?」ということです。これは、逆説的に答えるなら、一年戦争を戦うのにペガサス級は「必要なかったから」といえると思われます。
 ペガサス級は確かに地上、宇宙のどちらでも使えるものの、宇宙ではマゼラン級やコロンブス級が続々と量産され、地上ではビッグトレーやミデアがあり、艦としての火力もMSの輸送手段も運用面やコスト面ではあまり効率がよいといえない。これが最大の問題だったのでしょう。ペガサス級の(個艦としての)高い戦闘能力も、結局は複数の艦艇でユニットを組んだ部隊には(運用面で)勝てなかったというわけです(考えてみれば当たり前の話ではあるのですが)。ただし、単艦で(友軍と共同作戦が取れない)敵地を長駆進撃するに当たっては高い個艦性能は有効であることは疑い有りません。事実ホワイトベースはそういった使われ方をされて多くの戦果を上げています。ただし、これが主要兵器としてはやはりなり得ないでしょう。つまりは、きわめてまともな判断からペガサス級は量産されることなくごく少数のみが建造されたにとどまったのです。
 なお、連邦がこういった艦(ただ一艦で一つのユニットに匹敵する自立性の高い艦)を建造したのは、やはり戦前の主要ミッションであった警備・威圧任務に根本があるといってよいでしょう。長期にわたってこの種の任務を行うときに、戦艦と巡洋艦で一つのユニットを組んで運用するのは運用コストも掛かります。もしそこそこの戦闘能力があり航続力も長大な艦に支援兵器や偵察用兵器を搭載できるのなら、これらの任務を単艦でこなす事は十分に可能となります。こうしてペガサス級は計画されたのでしょう。

 こうして、一年戦争を戦い抜いた連邦軍は、同戦争における戦訓を取り入れた結果、次の艦隊整備計画で艦隊戦力の増強と特殊任務艦の量産にはいることになりるのです。

■ 戦後 〜0083〜

 エウーゴとティターンズの紛争が始まるまでのこの時代、連邦軍は〈マゼラン改級〉を初めとしてMS搭載能力のない火力重視型の艦艇を多数建造し、時代錯誤ともいえる大艦巨砲主義の道をひた走ったと言われるのですが、実際の所はそれほど簡単な物ではありませんでした。

 この当時建造されたのは

   ・マゼラン改級戦艦
   ・バーミンガム級戦艦
   ・サラミス改級巡洋艦
   ・ペガサス改級強襲揚陸艦
   ・コロンブス改級輸送艦

 です。これらの内、マゼラン改級は対空火器の増備などマイナーな変化にとどまっていますが、サラミス改級は以前の物と比べて火力を3倍に強化してあります。また、ペガサス改級は主にMSの運用能力を強化しています。

 まず、当時の連邦軍は在りし日の半数もの艦隊戦力が残存していると言われているジオン残党に対しての威圧・制圧が主任務であり、艦隊戦力を整理・縮小することは到底出来るものではありませんでした。
 さらには、一年戦争の戦訓(注4)から艦艇の攻撃力不足を補うべく、マゼラン級やサラミス級の火力強化は必須でした(特に艦隊戦力としての中核を担っていたサラミス級は、戦艦であるマゼラン級とは違って元々が警備艦としての役割が重視されていたことから攻撃力が決定的に不足していたため飛躍的に火力を増大する事が望まれたのです)。
 付け加えるならば、MSの作戦半径は一年戦争とほとんど変わらず、最終的には艦艇抜きに艦隊決戦を行うことは非現実的でした。

注4:
 一年戦争においてMSによる艦船撃沈は(それがベテランパイロットでもない限り)難しいものがありました。アムロのガンダムでさえ、チベ級重巡の撃沈に相当の手間が掛かったことからも判るように、暫減戦力としてならいざ知らず、対艦打撃戦力として運用するにはMSはまだまだ技術的な発展が必要でした(ジオン軍によるルウム以前の大戦果は核バズーカによるものでした)。

 以上のような現実から、連邦は一年戦争を戦った時と同様に「対艦戦闘を行う軍艦とそれを支援するMS母艦」によってユニットを組んで作戦行動を行うことを考えていました。このために、直接砲戦をこなす戦闘艦の量産を行う一方で、以前よりも更に搭載量を増し、艦隊に随伴できるよう機動力を増大したコロンブス改級を平行して建造し、これにMSを搭載して運用することが予定されていました。
 つまり、この時期の「連邦軍の戦艦重視」は、バーミンガム級を初めとしたMS搭載能力を持たない艦艇を建造したが故に発生した一種の錯覚に過ぎなかったと言うことが出来ます。
 なぜなら、連邦軍がこの時期に建造した大型戦艦はバーミンガム僅か一隻だけであり、マゼラン級戦艦も大幅な火力強化が行われていないからです。
 ですから、事実としては、連邦軍は戦艦を重視したのではなく、MSを戦力の中心において戦力整備に向かっているといっていいと思われます。

 なお、ペガサス級は一年戦争の戦訓を取り入れ、更にMS搭載数を増した改型に生産が移行していますが、特殊任務艦であるという認識は変わらず、ジオン残党に対する独立機動戦力として運用されています。これは戦前の基本コンセプトと異なっているように見えますが、「自立性の高い艦による単艦行動」という運用方針は同じであり、本質はそれほど変わってはいません。

■ グリプス戦役 〜エゥーゴとティターンズ〜

 この時期における“戦争”は、イデオロギーにかこつけた連邦内部の主導権争いであり、政治的にはほとんど無意味な物でしたが、MSの進化・発展という点では非常に重要な意味を持っています。
 そして同時に、MSの進化と平行して、搭載する側の艦船もまた大幅な発展を遂げることになります。
 なお、厳密には両者(特にエゥーゴ)艦船をこの場で語るのは問題があるかもしれませんが、両者とも連邦艦艇を主兵力に戦闘を行っていたためここで解説することにします。

 まず、共に使用している艦船からです。

・サラミス改級巡洋艦MS搭載型(軽巡洋艦)
 一年戦争後に新造されたサラミス改と同じ名前が与えられていますが、これは設計からして全く違う代物で、一年戦争時に建造された艦をアップデートした物です。基本的には、艦前方を格納庫としMSの運用能力を付与した物と考えるとよいでしょう。
 サラミス改(火力強化型)をベースに改装された物や火力強化型をもとに新造された物もなかったとは言えませんので、同級の中でも多少性能差が存在する可能性があります。また、艦隊運用面からもアレキサンドリア級よりも小型の艦は何かと必要なので、グリプス戦役時後も細かい部分をリファインしながら建造されていた可能性があります(F91にも出てきてるくらいです……)。
 火力は単純計算で一年戦争時におけるサラミス級の倍もあり、きわめて有効な戦力となっています。

・マゼラン改級戦艦
 一年戦争時のマゼラン級を再設計した物で、0083に登場した物と同じと考えて問題はないと思います。
 MSこそ搭載していないものの砲撃力は高く、また数もあったことからエゥーゴ、ティターンズ両軍にとっての艦隊決戦時における主力戦艦として使用されました。Zガンダム劇中では全く活躍していませんが、使われていると思います、多分……(グリプス2争奪戦時などで)。もっとも、改装されていない普通のマゼラン級が参加していた可能性も捨て切れませんが。

・改マゼラン改級戦艦
 こちらはセンチネルで登場したマゼラン改級です。サラミス改(MS搭載型)の様に艦首にMSカタパルトを持ちます。これは従来艦を改装した結果か、全くの新造か、それとも両方かという問題はありますが、能力的にはどれもそれほどの差はないものと思われます。なお、当然ながら格納庫の配置位置が配置位置なので従来艦と比べると火力が落ちていますが(艦首に配置されていた2基の主砲を撤去しています)、これはMSの運用能力を付与したことで相殺されるという判断があったのでしょう。
 蛇足ですが、サラミス級がMSを搭載しつつ火力も強化されてるのに、マゼラン級が火力を犠牲にしなければMSを搭載できなかったことを考えると、マゼラン級はきわめて設計に余裕がない──あるいは、サラミスの設計に余裕を持たせすぎた?──ものだったのかもしれません(火力──つまり、戦闘能力──をなにより重視しなければならない戦艦の設計スタンスとしては、真っ当なものですから、マゼランが駄作というわけではないです)。

 次に、ティターンズ側艦船です。

・アレキサンドリア級巡洋艦(重巡洋艦)
 一年戦争の後、旧式化した連邦艦艇を更新するべく計画された新造艦です。MS運用能力を強化した万能巡洋艦であり、宇宙空間ではペガサス級を上回る性能を有します。複数で戦隊を組んで作戦を行っていなかったことからも判るように、単艦運用を念頭に置いた警備巡洋艦としての側面が強いと思われます。
 諸性能は優秀で汎用性に富み、運用実績は高い物があったのですが、エゥーゴは同級に対抗して後からアーガマ以下の艦を造ったこともあり、個艦性能では劣っていました。
 なお、連邦の新型巡洋艦であるためエゥーゴに運用された物もなかったとはいえませんが、主にティターンズ側が運用していたのは間違いないと思われます。

・ドゴス・ギア級戦艦
 ティターンズの艦隊旗艦で、バーミンガム級戦艦の二番艦です。……といっても、艦橋部以外は全て新規設計されており、同型艦とはとても言えない物となっています(予算折衝では二番艦として通ったのでしょう、多分……)。
 きわめて重武装で、かつ必要がないと思えるほどMSを搭載しています。
 特筆すべきはバーミンガム級と比べて遠距離砲戦を重視した設計となっていることです(二門の長距離砲を装備しています)。
 エゥーゴとの抗争のさなか、使い勝手の良いアレキサンドリア級の量産をせず、わざわざ大型戦艦を建造したのは、アクシズが地球圏に帰還しようとしていたという事実があるのではないかと思われます。この時期、グワジン級を越える戦艦を一隻も持たなかった連邦としては対抗上無理にでも造っておきたい艦だったんでしょう。

・ロンバルディア級戦艦
 戦艦と命名されているものの、実質的には重巡洋艦といっていい艦です。ごく少数のみ(下手すると一隻のみ!)が建造されました。
 アレクサンドリアなどと比べると砲門数が少ないですが、ドゴス・ギアを同時期に建造が進められたことから遠距離砲戦に対応した火砲を搭載したが故の結果だったのではないかと思います(あるいは、MSを多数搭載した空母みたいなものだったのかもしれませんが)。建造された時期から、おそらくラーディッシュ級の対抗艦と思われます。

 そして、エゥーゴによって計画・建造された艦船についてです。

・アーガマ級強襲巡洋艦
 いわゆる「機動母艦」です。基本的に単艦で行動して敵(ティターンズ)の後方を引っ掻き回すことを目的としています。
 政治的思惑からエゥーゴのフラグシップ(と言うよりキャピタルシップ)として建造された艦でもあり、そのため多大な戦果を挙げることが求められました。故に、小さいくせにやたらと重武装な上、MSを多数搭載するという無茶をしています。 とても艦乗員の生活環境を考慮してるとは言い難い艦だったのではないでしょうか(だから居住ブロックを別に作ったのかもしれない)。
 第二次世界大戦におけるドイツの“装甲艦”のような船といえるでしょう。

・アイリッシュ級戦艦
 アーガマと同時期に建造された大型艦で、エゥーゴの艦隊決戦用の艦です。
 とはいうものの、エゥーゴはティターンズより数で劣るため、包囲されることを避けるためにティターンズ艦艇より概して高速で、かつ火力も優秀です。結果として、防御力にしわ寄せが来た第一次世界大戦における“巡洋戦艦(あるいは装甲巡洋艦)”みたいな艦になっています。
 そのため、戦争序盤ではアーガマと同様ティターンズ部隊に対し一撃離脱を繰り返したためティターンズも捕捉に苦慮していものの、コロニーレーザーを巡って行われた艦隊決戦では拠点防御という望んでない使われ方をされたため逃げることが出来ず、正面から敵艦隊と殴り合いを行った結果大損害を被りました(ハンブラビ1機に撃沈された艦もあります)。
 センチネルでは同級は重巡洋艦に艦種が再類別されていますが、建造経緯を見ればそれもまたしかりでしょう(防御を犠牲にした段階で、戦艦とは言えないためです)。

 さて、面白いのはこの両艦は共にMSカタパルトが前面を向いており、かつ相当に長いということです(ドゴス・ギア以前の連邦艦船とは趣を異にします)。ガンダリウム合金の使用によってMSの重量が減少しているこの時期、なぜわざわざカタパルトを従来艦より伸張しなければならなかったのでしょうか? そして全てのMSカタパルトが前方を向いているのでしょうか?
 理由は簡単です。MSの運用方針がティターンズと異なるからです。

 この時期、MSはどのような運用方針が検討されていたのでしょう?
 グリプス戦役におけるMSは──特にエゥーゴでは──第三世代MSである可変MS(TMS)の開発が熱心に進められていました。
 可変MSの特徴は、可変時において推進力を単一方向へ指向することで戦場侵入時や離脱時における機動力の強化を(推進剤を無駄なく使用することで)図ることにあるといえます。そして、いざ戦場に到達すれば人型体型となり作戦を行うことになります。
 つまり、第三世代MSが持つ可変機構は、「戦場に移動するために必要な機動力の確保」を得るべく開発されたのです。
 そして、これによってMSに一年戦争時に得られなかった長大な航続力の確保──というより、実質的作戦半径の増大──を計ろうとしました(注5)。

注5:
 同時期、MSの航続距離延長のためにSFS(サブ・フライト・システム)の開発も盛んでした。

 結果的に、あまりに高い製造費用から可変機構MSは量産されることなく時代の彼方へと消えていきます。
 しかし、搭載する艦船側も設計に当たってこの方針(MSの航続距離延長)が考慮されていないはずはありません。
 MSの航続距離を延長するために、エゥーゴではMSに対し大エネルギーを射出時に与え、出来るだけ短時間で遠くに飛ばそうとしたのです(つまり、単位時間あたりの火力投射距離の伸長を行ったわけです)。
 つまり、この時代を初めとして以後の艦船建造における基本となる「長大なカタパルト」は、MSの航続距離延長のために必要とされたものだったのです。

 では、どうしてこのような航続距離の延長がエゥーゴで望まれたのでしょうか? 理由は簡単です。エゥーゴは戦力が少なく、艦船同士による正面戦闘(つまり消耗戦)など行えなかったためです。そこで、MSだけを長駆敵部隊に送り込み、母艦を無事な位置に置いたまま一方的に攻撃することを目論んでいたのです(いわゆる「アウトレンジ戦法」)。

 そう考えてみると、アイリッシュ級の後方カタパルトの存在が新たな疑問として浮上しますが、これは敵の追撃時に後方へMSを射出できるようにしたものだと考えるとそれほどおかしいものとはならないと思われます。

 さて、こういった前方集中型長距離カタパルトと対照をなすのがドゴス・ギアのカタパルト配置です(長距離カタパルトもついていますが……)。
 このような全方位多数配置はどのような目的で作られたのでしょうか?
 おそらくは艦隊防空を主眼においていたものと考えられます。
 どのような方面から敵襲を受けようとも、迅速に搭載MSを迎撃任務へ送り込むべくこのカタパルト達は存在するのです(もっとも、味方(と思っていた勢力から)の奇襲をうけてはどうしようもなく、あっけなく沈んでしまいましたが……)。
 つまり、この種のカタパルト配置は従来までの連邦軍の艦艇設計の集大成というべきものなのです。

 MSの航続距離伸張は、カタパルト配置だけでなく他の点でも艦船設計の影響を与えました。それは、「遠距離砲戦の重視」です。エゥーゴ艦艇はティターンズ艦艇を一方的に叩くべく遠距離での火力投射が可能な艦艇群を建造しました。これも「アウトレンジ作戦」の一環ですが、そのために艦船は以降どんどん遠距離砲戦での威力を維持するために大火力を求めてメガ粒子砲・ハイメガ粒子砲とひたすら肥大化を続けていくことになります(もっとも、MSの進化の方が早かったため、第一次ネオジオン抗争終結後には火砲の強化よりもMSの方が重要な存在となり、第二次ネオジオン抗争時以降は艦艇の主砲搭載量が大きく減少してしまいますが……)。

 以上の点から、艦艇設計という点では総合的にエゥーゴに軍配が上がると思われます。
 彼らの設計した艦船スタイルは、後世に伝わりさらなる発展を示します。そしてそれは、次の戦争によってさらに洗練された物へとなっていくことになります。

■第一次ネオ・ジオン抗争

 宇宙歴0088に始まった第一次ネオ・ジオン抗争は、グリプス戦役の結果エゥーゴとティターンズの戦闘によって消耗した地球連邦に対して、ハマーン・カーンを指導者とするネオ・ジオンがサイド3の割譲とそれに関わる混乱に対しての戦いでした。
 さて、この戦争において連邦側(正確にはエゥーゴ陣営ですが)で新規設計されて建造されたのはネェル・アーガマだけでした。
 これは、第一次ネオ・ジオン抗争がグリプス戦役の延長として行われた戦闘であったためで、新規の艦船を設計する余裕がなかったという事情があったためです。

・ネェル・アーガマ
 グリプス戦役の戦訓を受けて建造された新造艦。アーガマより一回り巨大な船体を持つ。アイリッシュ級を上回る高い攻撃力と防御力、十分なMS運用能力を持つだけでなく、ミノフスキークラフトによって地上においてすら運用が可能というけた外れの性能を有する。
 ただし、技術的にはアーガマの延長上にあり、特別新規な特徴を有しているわけではない。

 ネェル・アーガマは従来までの艦船設計をさらに推し進めた物でした。

……以下続刊

 あくまでもこの話は管理人(水上)の個人的解釈によるものです。バンダイのオフィシャル見解ではありませんので話半分で眺めてください。


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